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2011 #9

夏競馬といえば新馬戦

 今年の夏はいかがお過ごしでしたか。
 幸い静内の夏は、暑いといってもエアコンいらず。千葉の牧場は、厩舎の窓に遮光シートをかけるなどして乗り切りました。

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 夏といえば夏競馬。夏競馬といえば、新馬戦です。すでに入厩した当場の2歳馬たちも、順調にゲート試験に合格し、デビューに向けて調教をこなしています。当場の一番手はジェノア(牝 父ストラヴィンスキー 母ディスイズザライフ)。新馬3着から2戦目、8月14日の小倉で初勝利を決めました。20日の新潟ではクリスタルブランカ(牝 父ネオユニヴァース 母ラグナセカ)が新馬2着、同じ日の小倉でカジキ(牡 サクラバクシンオー/エターナルハピネス)が3着、翌21日にはシュンマリ(牝 父マヤノトップガン 母シルクアウローラ)が新馬3着と頑張っています。

 中央競馬だけではありません。地方でも当場生産馬たちが好発進。道営でラプタークラウドがJRA認定を勝ったのを皮切りに(9月1日 連勝で2勝目を挙げました!)、大井でスズランステージが2戦目を快勝しました。同じく大井でデビューを控えているスズランメロディ(南関東重賞戦線で活躍したトウケイファイヤーの全妹)も楽しみです。

 さて、今年は珍しく、私の馬が船橋の川島正行厩舎からデビューしました。
 名前はキャントセイワーズ Can’t Say Words(言葉にできない)。父アフリート、母リファールニースという血統の牝馬です。 地方競馬には能力試験というものがあり、2歳馬は800mの距離を定められたタイム内に走れないとデビューできません。キャントセイワーズはこれを49秒7でクリアしました。51秒台でも「結構速いね、期待できるよ」と言われるところを楽々49秒台。期待しちゃいますよね。

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 それでは、ここでちょっと母リファールニースのお話から・・・。
 父はGreinton(父Green Dancer 母Crystal Queen by High Top)。1981年生まれの英国産馬です。生産者はビジネスの世界でも競馬の世界でも超有名なギリシャの船舶王Sutavros Niarchos。1983年、フランスのサンクルー競馬場でデビュー。鞍上は日本でもお馴染み、第1回ジャパンカップを勝った米国人騎手キャッシュ・アスムッセンでした。デビュー戦を勝利で飾り、2・3歳時は4戦3勝2着1回。1984年夏に米カリフォルニアのチャーリー・ウィッティングハム厩舎に移籍すると、ハリウッドゴールド・カップ、サンタアニタ・ハンデキャップなど、GI3勝を挙げました。生涯成績22戦10勝2着8回。そのまま米国で種牡馬になりますが、1992年にドイツに移り、2009年まで現役を続けました。

 母バーブスボールドは1978年米国生まれ。名種牡馬リファールを兄に持ち、1歳セリでは当時の牝馬最高価格の145万ドルを記録しました。勝鞍はフランスでの1勝だけでしたが、重賞2着の実績を残しました。繁殖となり、Northern Dancerを受胎している時についた価格が365万ドル(お腹の仔が後のThorn Dance)。その3年後、Greintonを受胎してキーンランドのノベンバーセールに上場された時、私がいくらで競り落としたかはご想像にお任せしますが、興奮と嬉しさで、私の頭からは湯気が出ていたそうです。
 その後もバーブスボールドは、シンコウバーブ(藤澤厩舎にお世話になった腕白坊主、5勝)、サイレントキラー(同じく4勝)といった素晴らしい仔たちを送り出し、リファールニースの1つ上の姉Page Proofは名牝シーキングザパールを産みました。

 リファールニースは不出走ですが、母としてはとても優秀でした。1億3000万円を稼いだビッグフリートをはじめ、新馬勝を含む3勝を挙げたダイワエッセンス、平地で4勝、障害でも阪神ジャンプS(JGV)を含む4勝と活躍したマヤノスターダム。
現在、中央に所属する現役馬2頭はキャントセイワーズの全兄です。休養中のヒラボクオウショーは4勝。クジュウクシマは中央ダートで入着すれど勝ち切れず、園田に移籍してすぐ2勝を挙げ、3歳冬に中央に戻ってきました。直後に500万下を勝ち、現在は1000万下、しかも芝の長距離という新境地で活躍中です。

 キャントセイワーズは1歳秋ですでに500kgを超える馬体の持ち主でした。兄たちを優に超える馬格が、アフリートの牝馬を探していた川島調教師の目にとまり、預かって頂くことになったのです。
 入厩前の牧場での体重は534kg。それを522kgで仕上げてくるところが川島師の職人技です。師と私の期待はもちろん、単勝1.2倍という人気に応えて見事デビュー戦勝ちを収めてくれました。少し気合をいれただけで2着に4馬身差。先がとても楽しみです。

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 新馬戦はまだ始まったばかりですが、秋がやってくると、もう来年のクラシックをささやく声が聞こえます。キャントセイワーズには南関東のクラシック戦線での活躍を期待しています。ゆくゆくは中央の重賞にも参加できたらいいなあ・・・。

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