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2011 #11

クラシックを終えて

  今年も残すところあと2ヶ月。秋華賞、菊花賞を終え、3歳馬たちの戦いが一段落しました。三冠レース全てを走り抜くことは本当に大変です。勝つこと、そして勝ち続けることはどれだけ大変でしょう。三冠馬オルフェーヴルと池江泰寿厩舎はじめ関係者の方々には敬意を表します。

 ホエールキャプチャはクラシックの3戦を桜花賞2着、オークス3着、秋華賞3着で終えました。どこかで勝って欲しかった。それが正直な気持ちです。だけど、私はレースを迎える度に手を合わせて祈るのです。無事に走り終えますように・・・と。デビューしてからずっとどんな状況でも3着以内を外すことなく走り続けてくれている彼女。常にベストを尽くすプロのアスリートたる姿には頭が下がります。

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 秋華賞当日、嶋田賢オーナーは32名の大応援団とともに京都競馬場へいらっしゃいました。今度こそ、オーナーやご家族、応援の方々、皆で喜びたい。これを勝って最優秀3歳牝馬のタイトルを!皆、そんな意気込みで競馬場の門をくぐられたことでしょう。 前日の土曜日は雨がなかなか止まず、雨嫌いの血統とオークスでの結果が頭をよぎりましたが、当日のパドックでは晴天の下を鯨の横断幕が泳いでいました。

 パドックで見るホエールはこれまでにない出来でした。“親の欲目”ではないと思います。私の家族が角居調教師に「お手柔らかにお願いします」と挨拶したら、「どうぞ、今日は持って行って下さい」と返ってきたそうです。結果、彼に持って行かれたのですが、後でその真意を聞いたら、これは敵わないと思うくらい、角居師の目にもホエールが万全の出来に映ったのだそうです。

 心配のスタートもきっちり決まりました。この時点で「今日は大丈夫!」と思いました。前日までの雨でコースの外側は荒れ模様。外を回っては伸びないことは池添騎手もわかっていました。しかし、6枠のホエールはなかなか内に潜り込めないまま直線へ。その上、並んだら強い馬が一頭で追い込む形になりました。
ゴールの瞬間は全員が溜息。結果は3着でした。勝ったのは角居厩舎のアヴェンチュラ。内枠の利をうまく生かし切った岩田騎手の勝利でした。言葉を発することもできないくらい全身の力が抜けました。オーナーより前列の席にいた私には、その瞬間のオーナーの表情はわかりませんが、相当悔しかったことは間違いありません。にも関わらず、オーナーは先に帰る私たちを「ありがとう」と笑顔で送り出してくれました。

 翌日の北海道の千代田牧場は静かでした。来客もなく、事務所の電話も鳴らず。いつも鳴りっぱなしの私の携帯でさえ、この日は沈黙でした。みんな、空気読み過ぎでしょう。 そんな中、午後3時過ぎに来客が1件。米国のセリ会社Fasig-Tiptonの社長とエージェントの女性でした。突然の訪問で、前週のレースの結果を知らなかったのでしょう。
「貴方の牧場の馬たちは、最近successですか?」(もちろん全部英語ですよ)
と尋ねられて私、参りました・・・。

 気を取り直して先に進みましょう。ホエールキャプチャの次走はエリザベス女王杯。タイトル奪取のチャンスはまだ残されています。海外からの強豪もいて、これまでよりもさらに強い馬たちとの対戦です。私がいつまでもがっくりしていては、ホエールに申し訳ない。彼女はもう次のゴールを見ているはず。再度、力の限り応援するだけです。

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 さて、10月23日の東京競馬場、第4レースの障害戦でフローライゼが勝ちました。私、飯田正剛が馬主としての100勝目となる記念すべき勝利です。生産馬の成績は毎週気にしても、自身の通算勝利数を意識したことはありませんでしたので、中山馬主協会からお祝いに赤い蘭の花を頂いて、思いがけず嬉しくなりました。ありがとうございます。
100勝達成まで20年。期待が外れた馬もいましたし、蹄や肢の問題を抱えながらも活躍してくれた馬もいました。そうそう、トレンドハンターは今やすっかり牧場生活をエンジョイしているご様子。放牧地で気持ちよさそうにしている彼女を、繁殖スタッフと眺めながら、「オークスに出ていればなあ」なんて、未だに言ってしまう私です。

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