2013　#2

母　飯田政子･･･86歳にして元気一杯！

　毎年お正月競馬の時期は、母のいる千葉牧場に家族そろって集まり、86歳になる母への親孝行も兼ねて、皆で中山競馬場に行きます。今年も馬主席フロアに着くと、ダイワの冠名でお馴染みの大城敬三オーナーがいらっしゃいました。
「おおっ、同級生！」
うちの母のことを大城会長は「同級生」と呼んでいます。大城会長は大正13年生まれの89歳。大正15年生まれの母は10月で87歳。この年になるともう「同級生」みたいなものですね。今でもゴルフがお好きな会長は、ハーフ40で回るほどの腕前だそうで、歩き方も姿勢良く颯爽としていらっしゃいます。
「あんたも歩いてみろ」
すると、負けず嫌いなうちの母、すたすたと歩き始めました。「あれ！？いつもと違うじゃない！」と家族みんな大笑い。おまけに別れ際には会長に向かってしっかり
「千代田牧場を応援してね。全部買って下さい。よろしく」
･･･これ、母だから言えることです。参りました（笑）

　ロイヤルボックスでレースを観戦。ランチを楽しみ、パドックにも行きました。久しぶりの母の元には、たくさんの方々がわざわざ挨拶に来て下さり、「お元気ですか？」と聞かれると、「上にカラカラとつくけどね！」とご機嫌でした。

　中山のメインレースが終わり、京都のシンザン記念は特別に調教師の先生が集まる部屋にお邪魔させて頂きました。結果は先月のコラムに登場したせっかち調教師西園さんのエーシントップが本領を発揮して完勝。嬉しいムードの中、田村康仁調教師がやってきました。
　師のお父さん田村駿仁調教師には生産馬がお世話になりました。キヨトミは駿仁師の初出走の馬（２着）。初勝利もキヨトミでした。そして開業２年目で手にした初重賞がキヨトミの中山牝馬Ｓです。
「そう、あなたが田村駿ちゃんの息子さん･･･。頑張ってね。調教師っていうのは、走る馬を走らせるのは当たり前で、走らない馬を走らせるのが技術なの。能力のある馬まで走らせないようでは駄目よ。」
　･･･うちの母、笑顔で結構厳しいことを言います。物忘れがひどくなったかなと心配することもありますが、こと馬と人を見る目は全く衰えていません。

　その後も、最終レースに出走させている調教師が次々とやってきました。
「あら、誰でしょう。逆光で顔がよく見えないわ」
　それは国枝栄調教師（単に黒くてわからなかっただけ･･･（笑）。国枝師とは師が山崎彰義厩舎で助手をしていた頃からのお付き合いで、母の馬もずいぶん走らせてもらいました。
　そして池上昌弘調教師。彼は中山の古賀喜蔵厩舎で見習いをしていた頃からのお付き合い。昭和42年のデビュー初騎乗の馬が当場で育成したフシミでした。
　中野栄治調教師は、私が高校生の頃、北海道の牧場に二人のお嬢様を連れて遊びに来て下さった俳優の川口弘さん・野添ひとみさん夫妻の馬に騎乗していました。騎手時代の中野さんは和製レスター・ピゴットとも呼ばれるほど、めちゃくちゃ格好よかったのです。渋さを増した今ももちろん格好よく、母にとっては「若い男の子」の範疇のようです。
※レスター・ピゴットは1985年に引退したスタージョッキー。英クラシック30勝、エプソムダービー9勝を挙げた。

　他にも宗像義忠調教師、戸田博文調教師、高橋祥泰調教師･･･と、偶然にも母と縁の深い調教師が集まりました。皆で記念撮影をして、母も最高に嬉しかったことでしょう。一人一人と固い握手を交わして、
「今日は若い男の手をたくさん握って元気もらっちゃったわ。ほんとよ」

左から中野師、高橋師、母、私、国枝師、宗像師	池上師と

　ここに、古賀史生師と藤沢和雄師がいたらパーフェクトでした。
　古賀さんは成蹊大学馬術部の時代に、千代田牧場でアルバイトをしており、私はずいぶんと勉強を教えてもらいました。その後、古賀さんが麻布獣医科大学に入り直して、私の同級生となったのもおかしな縁です。古賀さんが助手時代に作ったサークルが楽馬会（らくばかい）。今でこそ珍しくなくなりましたが、当時は少なかった大卒の助手を中心とする集まりで、藤原辰雄師、高橋祥泰師、宗像義忠師など、メンバーでよく飲みました。
　藤沢和雄調教師との縁は以前のコラムで触れています（2010年3月）。藤沢師は母のことをとても大切にしてくれています。