千代田牧場が誇るビューチフルドリーマー系をはじめ、現役時に活躍したお母さん、外国生まれのお母さん、千代田の歴史を作った功労馬たちをご紹介。

千代田の歴史を作ったお母さん

ビクトリアクラウン Victoria Crown

1979年生 栗毛
14戦6勝  1981年最優秀2歳牝馬、1982年最優秀3歳牝馬エリザベス女王杯、クイーンC、クイーンS、新潟3歳S

 男勝りの馬体で、前評判の高さからデビュー戦は単勝1.1倍の大本命。ところがパドックで落鉄。打ち替えに時間を要し、返し馬もできずスタート前に燃え尽きるというほろ苦いデビュー戦でした。仕切り直して2戦目の新馬戦(当時は同開催なら新馬戦を2回使えました)から3歳秋のクイーンSまで5連勝(うち重賞4つ)。絶対本命視されていた桜花賞1週前の追いきりで骨折し、桜花賞・オークスは断念しましたが、その鬱憤を晴らすかのように、秋のエリザベス女王杯を快勝。「幻の三冠馬」とも評されました。その年の有馬記念では古馬の強豪を相手にヒカリデュール、アンバーシャダイから2馬身半の5着。桜花賞、オークスの勝馬を退け、2歳時に続き最優秀3歳牝馬を受賞しました。
 ビクトリアクラウンの残した牝馬たちが今、立派にビューチフルドリーマー系の一翼を担っています。
ファバージ Princely Gift
Spring Offensive
ワールドハヤブサ ダイハード
オーハヤブサ

タレンティドガール Talented Girl

1984年生 栗毛
11戦4勝 エリザベス女王杯-G1、オークス-G13着

新馬2着2回の後、3戦目で勝ち上がり桃花賞を連勝。桜花賞向きではないと判断し、ぶっつけ本番でオークスに臨みました。断然人気のマックスビューティには及ばなかったものの、2着クリロータリーとはハナ差の3着。エリザベス女王杯では、その年の桜花賞、オークスを含め8戦全勝のマックスビューティーをゴールまで1ハロンで並ぶ間もなく交わし、2馬身差をつけてゴール。その前後に兄ニッポーテイオーが天皇賞(秋)、マイルCSをそれぞれ5馬身差で快勝し、わずか4週間に兄妹でGⅠ3勝という記録を達成。一躍、母チヨダマサコを名牝に仲間入りさせました。
 繁殖生活3年目にブレイブウーマン、リーディングロウルらとともに渡英。Nashwanをつけて生まれたエミネントガールの孫から、ヴィクトリアマイル勝馬のホエールキャプチャが出ました。
リマンド Alcide
Admonish
チヨダマサコ ラバージョン
ミスオーハヤブサ

ブレイブウーマン Brave Woman

1985年生 鹿毛
44戦4勝(2着5回、3着4回)新潟3歳S-G34着

2歳7月の新馬戦を単勝1.2倍で快勝。準オープンまで勝ち上がり、総収得賞金は6465万円。一度も故障することなく6歳まで44戦をタフに走り抜けました。
 引退後すぐに渡英し、Machiavellianとの間にできたのがコクトジュリアン。新馬戦、赤松賞を連勝し、朝日杯3歳S(G1)を3着。外国産馬ゆえにクラシックへは出走できませんでしたが、クリスタルC(G3)を勝ち、2億5000万円を稼ぎました。日本に戻って2番目の仔がタイトスポットの牡馬ブラボーグリーン(京阪杯-G3)。その後もナイキアフリート(OP)、ブレイブスペシャル(準OP)と活躍馬を輩出しました。また唯一の娘となったマジカルウーマンも、ナイキアースワーク(ユニコーンS-G3)、ドラゴンファイヤー(シリウスS-G3)と2頭の重賞勝馬を輩出。孫、曾孫の世代からも活躍馬が出ることを期待しています。
ブレイヴェストローマン Never Bend
Roman Song
チヨダフジ ファバージ
ワールドハヤブサ

ナギサ Nagisa

1993年生 黒鹿毛
34戦4勝(2着6回、3着4回)エリザベス女王杯-G14着、府中牝馬S-G34着


写真は初子サウンドザビーチ
 当初の馬名はウルトラシーの予定が、女の子らしい名前をということでナギサに。3戦目で勝ち上がりながら、500万下を2着4回、3着3回、4着5回とうろうろ。この頃、スタッフの間では彼女のことを「さなぎ」と呼んでいました。翌年7ヶ月半の休養明けは凡走後したものの、特別を2連勝。格上に挑戦した府中牝馬S-G3を4着。そしてエリザベス女王杯へ。エアグルーヴ、メジロドーベル、エリモエクセルなどの強豪がひしめき合う中、14番人気のナギサはベテラン安田富男騎手を背に逃げて、まさにウルトラCの4着。気がつけば本賞金は1億円を超えていました。
 2000年から繁殖入りしましたが、2005年の難産がもとで蹄葉炎を発症。闘病の末、その夏にこの世を去りました。 現役時代からのファンの方も多く、牧場でも期待の繁殖牝馬だっただけに本当に残念でしたが、2007年に初仔サウンドザビーチがTCK女王杯-G3を制しました。
マークオブディスティンクション Known Fact
Ghislaine
ミデオンルビー ノーザリー
ワールドソロン

ビバムール Vivante Meule

1992年生 黒鹿毛
12戦2勝(2着3回)

 本馬の全姉ウェルシュマフィンが「タイキシャトルの母」として有名なら、こちらは「ピースオブワールドの母」といったほうが、ファンの方にはピンとくるかもしれません。アイルランドで生まれ、日本で12戦2勝。Caerleonの肌馬をどうしても導入したくて、競馬引退後に当場へやってきました。2番仔として生まれたのがピースオブワールドです。生まれたとき呼吸をしておらず、人工呼吸によって一命をとりとめたピースは、血液中の免疫機能の数値が低く、輸血の必要がありました。このとき血を提供したのがタイガーレイジ。ニッポーテイオー、タレンティドガールの弟です。つまり、ピースオブワールドにはチヨダマサコの血が入っているのです。その後はご存知の通り、デビューから4連勝でファンタジーS(G3)、阪神ジュべナイルフィリーズ(G1)を制し、満場一致で最優秀2歳牝馬に選ばれました。
Caerleon Nijinsky
Foreseer
Muffitys Thatch
Contrail

スマイルトゥモロー Smile Tomorrow

1999年生 黒鹿毛
14戦4勝

 2002年のオークスに優勝、牧場にクラシックの栄冠をもたらしました。生まれた頃は決して目立つ存在ではありませんでしたが、その真面目な性格が能力を開花させたのでしょう。速い調教をするようになると「おっ」と思わせるものがありました。調教でもレースでも気を抜かない性格のため、黄梅賞の前の二度の除外は馬にとってきつかったはずです。それでも黄梅賞を勝ち、桜花賞出走を確実にするために中1週で向かったフラワーCで重賞初制覇。中2週の桜花賞は6着でしたが、ほとんど馬体を減らすことなく闘い抜いた精神力はさすがです。そしてオークスへ。牧場みんなの願いを乗せて、先頭でゴールを駆け抜けました。
 産駒は新馬勝が2頭。2017年7月26日に小腸破裂のため亡くなりましたが、夢はまだ途切れていません。娘のサンキュースマイルはとても仔出しが良く、孫の代から何か出てきそうな予感です。
ホワイトマズル ダンシングブレーヴ
Fair of the Furze
コクトビューティー サウスアトランティック
シルクエンゼル